秋月種実72【必殺・一夜城!】
「岩石城が落城?!一日でか?」秋月は思わず問い返した。
秋月種実がいるのは、本城の古処山城ではなく、益富城だ。
益富(ますとみ)城は、黒田長政の「筑前六端城の一つ」としての方が有名かもしれない。
端というのは、豊前と筑前の国境にある城だからです。
秋月家では要害の岩石城なら一月は持つだろうと考え、
連携した軍行動をしようと、主君・秋月種実自らが本城を出て、益富城に入っていたのだ。
岩石城が落ちたとなれば、益富城にグズグズ留まれば秀吉本軍に囲まれてしまう。
秋月は益富城を放棄し、本城の古処山城で大勢を立て直すことにした。
「殿!益富城の火災は鎮火できましたが、大手門は破壊され、水の手も断たれております」
使番の報告を陣中で受けたのは、先鋒の蒲生・レオン(洗礼名)氏郷だ。
「ふむ・・秋月は、これで我らを足止めしたつもりらしい。」ふっと余裕の笑みの氏郷。
氏郷「諸将の中で、こちらに到着してるのは誰だ?」
使番「は、毛利家よりの与力・吉川広家殿、徳川家よりの与力・本多忠勝殿・榊原康正殿です」
九州征伐に徳川家康が四天王のうち二人を派兵しているのを知ってる人は少ない。
管理人も秋月関連で郷土史掘り起こして知ったことだ。
豊臣秀吉は到着した本多と榊原を、自身の馬廻衆に臨時に組み入れた。
馬廻衆とは今風に言うとSPで、主君のボディガードを務めるため身辺に常にいる。
つい先日まで政治的に対立し、秀吉嫌いで知られる両名を側に置いたことに諸将は驚き、
「さすがは関白殿下、並みの度量ではない」と、秀吉の評判は増々右肩上がりとなっていた。
氏郷「彼らに伝えよ。ワシに思案があるので助力されたし、こちらへ御足労願いたい。とな」
ほどなく3名が、やってきた。「思案とは何でござろう?」と、さっそく榊原が訊ねた。
氏郷「うむ、秋月は益富城を放棄し古処山城へ引き上げたらしい。」
「城の主要箇所を破壊し火をかけ水の手も断っておる。」
「我らが、ここを拠点とするには、復旧に数日を要する。」
氏郷「そこでだ、時間稼ぎしたつもりの益富城が、一夜で復旧したら何とする?(* ̄ー ̄*)ニヤリ
本多「一夜城か・・面白い」戦場カン抜群の本多忠勝が真っ先に反応した。
榊原「なるほど、であれば仕掛けするのは、古処山から見える方角だけでよかろう。」
吉川「???(@@)い・一夜?とは?」広家は訳が判らないという表情だった。
氏郷「おお、毛利家中でも御存知ない方がいるとなれば、秋月家中では誰も知るまい。」
氏郷の爽やかな物言いが嫌味を感じさせない。
氏郷が墨俣の故事を話すと、すぐ広家も領解した。
吉川「なれば、このあたりの事情は毛利の方が詳しゅうござる。資材調達はお任せあれ」
と、即座に行動を開始した。
榊原は「平八郎・・有名な一夜城を吉川では知らぬのか?」と、早口の三河言葉で本多に話しかけた。
本多「亡き元春殿の関白嫌いは有名じゃ。嫌いな相手の手柄は耳に入らぬし、入っても人には教えぬ。」
榊原「なるほど・・確かに(納得の表情)で、お主は蒲生殿の差配に従うのか?」
一応、関白の臨時馬廻衆なのだ。報告に戻らねば不味いだろう、ということなのだ。
本多「事後報告でよかろう。関白の轡(くつわ)を取るより、こちらを手伝う方が面白い」
榊原「確かに∴・…( ̄◆ ̄爆)ブハ!」
ベテランの猛者二人は豪快に笑うと、氏郷の指示に従い行動を始めた。
夜になると益富城の城下には火の手が上がり、たくさんの松明が動きで大軍の移動の様子が見えた。
秋月は(城の鎮火は終わったようだが、すぐに兵を収容することは出来まい・・・)と胸を撫で下ろした。
が、ホッとしたのは一晩だけだった。
翌日早朝から我が目を疑う報告を受ける。
と・・とのぉ~益富城が・・一夜で元通りになってます!!!
秋月( Д ) ゚ ゚ ば・・馬鹿な!!
まるでキツネに誑かされているようだった。
昨晩、秀吉軍に焼かれたはずの城下は、いつもと変わりないし、秋月が放棄するとき火をかけたはずの益富城は、以前と変わらぬ白壁が遠望できた。
ネタバラシすると、氏郷は城下を焼いてなどいなかったのだ。
大きな篝火をアチコチで炊いて、いかにも城下が焼き討ちにあったように見せかけただけだった。
益富城の方は外壁を覆う木枠を作って、吉川が調達した白紙を張り付けただけのハリボテだ。
だが「一夜城」という概念が全くない秋月の人々には秀吉が妖術を使ったかのように見えた。
と・・との~~~~古処山城の裏に・・・一晩で城が出来てます!!
ギャァ!( Д ) ゚ ゚
こっちは秀吉が作った一夜城(* ̄・ ̄*)Vブイ
派手好きの秀吉は、秋月の度肝を抜くために、さらに違う演出を施していた。
何と崖の上から白米を落として、遠目から一夜で滝が出来たかのように見せかけていたという。
「秀吉は化け物だ・・・」主戦派だった秋月の長男・種長が、膝から崩れ落ちてへたり込んだ。
さて、この「ハリウッド級の秀吉の一夜城」は単なる伝説で史実では無いらしい。
籠城の時に「水不足を誤魔化すため」「馬の背に白米を流し落として」「水が豊富にあるように見せかける」
この白米伝説は日本各地にあり、たいていの落ちはスズメが白米を摘まんで食べて敵にバレル^^
ド派手な秀吉の伝説だけに「水に見せかける」だけで収まらず「滝になった」∴・…( ̄◆ ̄爆)ブハ!
ただし「蒲生氏郷の益富城・一夜城」は本当(* ̄・ ̄*)Vブイ
その話が広まるうちに「秀吉の一夜城+滝伝説」が派生したようです。
岩石城落城と益富城の一夜城は、ヤル気満々だった秋月軍の戦意を粉々に打ち砕くのに十分だった。
何度か触れたが、どちらの城も秀吉本軍による攻撃ではなく、先鋒の蒲生氏郷の働きによるものが大きい。
秋月種実は豊臣秀吉と戦う以前に、戦国の貴公子・蒲生氏郷にしてやられたのです。
(これでは、もはや戦えない・・・)
秋月の脳裏に浮かんだのは、9歳の時に大友軍の攻撃を受けて焼け落ちる古処山城と、亡き道雪の兵に焼き討ちにあい逃げ惑う城下の人々だった。
同じ憂き目に合うのは耐えられない!秋月の地だけでも守らなくては!!
こと、ここに至って秋月は「勝利と打倒宗麟」の二兎を追うのは不可能だと悟った。
「生き残るため」の降伏を決意するのだが それは またの話
次回「降伏の駆け引き」
秋月種実がいるのは、本城の古処山城ではなく、益富城だ。
益富(ますとみ)城は、黒田長政の「筑前六端城の一つ」としての方が有名かもしれない。
端というのは、豊前と筑前の国境にある城だからです。
秋月家では要害の岩石城なら一月は持つだろうと考え、
連携した軍行動をしようと、主君・秋月種実自らが本城を出て、益富城に入っていたのだ。
岩石城が落ちたとなれば、益富城にグズグズ留まれば秀吉本軍に囲まれてしまう。
秋月は益富城を放棄し、本城の古処山城で大勢を立て直すことにした。
「殿!益富城の火災は鎮火できましたが、大手門は破壊され、水の手も断たれております」
使番の報告を陣中で受けたのは、先鋒の蒲生・レオン(洗礼名)氏郷だ。
「ふむ・・秋月は、これで我らを足止めしたつもりらしい。」ふっと余裕の笑みの氏郷。
氏郷「諸将の中で、こちらに到着してるのは誰だ?」
使番「は、毛利家よりの与力・吉川広家殿、徳川家よりの与力・本多忠勝殿・榊原康正殿です」
九州征伐に徳川家康が四天王のうち二人を派兵しているのを知ってる人は少ない。
管理人も秋月関連で郷土史掘り起こして知ったことだ。
豊臣秀吉は到着した本多と榊原を、自身の馬廻衆に臨時に組み入れた。
馬廻衆とは今風に言うとSPで、主君のボディガードを務めるため身辺に常にいる。
つい先日まで政治的に対立し、秀吉嫌いで知られる両名を側に置いたことに諸将は驚き、
「さすがは関白殿下、並みの度量ではない」と、秀吉の評判は増々右肩上がりとなっていた。
氏郷「彼らに伝えよ。ワシに思案があるので助力されたし、こちらへ御足労願いたい。とな」
ほどなく3名が、やってきた。「思案とは何でござろう?」と、さっそく榊原が訊ねた。
氏郷「うむ、秋月は益富城を放棄し古処山城へ引き上げたらしい。」
「城の主要箇所を破壊し火をかけ水の手も断っておる。」
「我らが、ここを拠点とするには、復旧に数日を要する。」
氏郷「そこでだ、時間稼ぎしたつもりの益富城が、一夜で復旧したら何とする?(* ̄ー ̄*)ニヤリ
本多「一夜城か・・面白い」戦場カン抜群の本多忠勝が真っ先に反応した。
榊原「なるほど、であれば仕掛けするのは、古処山から見える方角だけでよかろう。」
吉川「???(@@)い・一夜?とは?」広家は訳が判らないという表情だった。
氏郷「おお、毛利家中でも御存知ない方がいるとなれば、秋月家中では誰も知るまい。」
氏郷の爽やかな物言いが嫌味を感じさせない。
氏郷が墨俣の故事を話すと、すぐ広家も領解した。
吉川「なれば、このあたりの事情は毛利の方が詳しゅうござる。資材調達はお任せあれ」
と、即座に行動を開始した。
榊原は「平八郎・・有名な一夜城を吉川では知らぬのか?」と、早口の三河言葉で本多に話しかけた。
本多「亡き元春殿の関白嫌いは有名じゃ。嫌いな相手の手柄は耳に入らぬし、入っても人には教えぬ。」
榊原「なるほど・・確かに(納得の表情)で、お主は蒲生殿の差配に従うのか?」
一応、関白の臨時馬廻衆なのだ。報告に戻らねば不味いだろう、ということなのだ。
本多「事後報告でよかろう。関白の轡(くつわ)を取るより、こちらを手伝う方が面白い」
榊原「確かに∴・…( ̄◆ ̄爆)ブハ!」
ベテランの猛者二人は豪快に笑うと、氏郷の指示に従い行動を始めた。
夜になると益富城の城下には火の手が上がり、たくさんの松明が動きで大軍の移動の様子が見えた。
秋月は(城の鎮火は終わったようだが、すぐに兵を収容することは出来まい・・・)と胸を撫で下ろした。
が、ホッとしたのは一晩だけだった。
翌日早朝から我が目を疑う報告を受ける。
と・・とのぉ~益富城が・・一夜で元通りになってます!!!
秋月( Д ) ゚ ゚ ば・・馬鹿な!!
まるでキツネに誑かされているようだった。
昨晩、秀吉軍に焼かれたはずの城下は、いつもと変わりないし、秋月が放棄するとき火をかけたはずの益富城は、以前と変わらぬ白壁が遠望できた。
ネタバラシすると、氏郷は城下を焼いてなどいなかったのだ。
大きな篝火をアチコチで炊いて、いかにも城下が焼き討ちにあったように見せかけただけだった。
益富城の方は外壁を覆う木枠を作って、吉川が調達した白紙を張り付けただけのハリボテだ。
だが「一夜城」という概念が全くない秋月の人々には秀吉が妖術を使ったかのように見えた。
と・・との~~~~古処山城の裏に・・・一晩で城が出来てます!!
ギャァ!( Д ) ゚ ゚
こっちは秀吉が作った一夜城(* ̄・ ̄*)Vブイ
派手好きの秀吉は、秋月の度肝を抜くために、さらに違う演出を施していた。
何と崖の上から白米を落として、遠目から一夜で滝が出来たかのように見せかけていたという。
「秀吉は化け物だ・・・」主戦派だった秋月の長男・種長が、膝から崩れ落ちてへたり込んだ。
さて、この「ハリウッド級の秀吉の一夜城」は単なる伝説で史実では無いらしい。
籠城の時に「水不足を誤魔化すため」「馬の背に白米を流し落として」「水が豊富にあるように見せかける」
この白米伝説は日本各地にあり、たいていの落ちはスズメが白米を摘まんで食べて敵にバレル^^
ド派手な秀吉の伝説だけに「水に見せかける」だけで収まらず「滝になった」∴・…( ̄◆ ̄爆)ブハ!
ただし「蒲生氏郷の益富城・一夜城」は本当(* ̄・ ̄*)Vブイ
その話が広まるうちに「秀吉の一夜城+滝伝説」が派生したようです。
岩石城落城と益富城の一夜城は、ヤル気満々だった秋月軍の戦意を粉々に打ち砕くのに十分だった。
何度か触れたが、どちらの城も秀吉本軍による攻撃ではなく、先鋒の蒲生氏郷の働きによるものが大きい。
秋月種実は豊臣秀吉と戦う以前に、戦国の貴公子・蒲生氏郷にしてやられたのです。
(これでは、もはや戦えない・・・)
秋月の脳裏に浮かんだのは、9歳の時に大友軍の攻撃を受けて焼け落ちる古処山城と、亡き道雪の兵に焼き討ちにあい逃げ惑う城下の人々だった。
同じ憂き目に合うのは耐えられない!秋月の地だけでも守らなくては!!
こと、ここに至って秋月は「勝利と打倒宗麟」の二兎を追うのは不可能だと悟った。
「生き残るため」の降伏を決意するのだが それは またの話
次回「降伏の駆け引き」
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