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北肥戦誌【1574年】その3

平井経治は如何にしても旧領へ復帰せんと、伯父・新 宗吟と頃合いを量り、
同年10月、須古・白石の地下人らを率い、数百人で須古へ打ち出て直秀の高岳城を囲んだ。

直秀は防戦虚しく敗れて横辺田へ退かんとするが、経治がこれを察して小通りの橋を焼くと、直秀はその煙を見て宝蔵寺へ立て籠もる。

そこを経治に攻められ、直秀は抗し難く自害した。隔して経治は高岳城へ帰還する。

これはすぐさま白石の福富(後に上野)讃岐守から佐嘉へ注進され、隆信は経治を退治すべく、
11月10日過ぎに10,000余騎を率いて横辺田へ着陣、福母山に本陣を置いた。


この頃、隆信の弟・龍造寺信周は下松浦征伐の為に西肥前に在陣していたのであるが、隆信の出陣を聞き、松浦党と共に佐嘉勢に加わった。

隆信が須古攻めへ動くと、福母大町を領する龍造寺家晴が先陣となり、上野讃岐守の一族47人らが出迎えて案内を務める。

早速に分担が決められ、鍋島信生・広橋一祐軒信了・小河信貫の併せて2,300余騎に、
旗本勢から百武賢兼・成松信勝・横尾内蔵允・田中源右衛門が加わって、城の北側・一間堀口へ向かう。

また龍造寺信周と松浦党は2,000余騎、これに前田家定・井元上野介を案内者として城の東側・白河口から男島の方へ押し寄せる。

次に、納富信景に田代因幡守・その子の田代治部少輔・田代左馬助らが加わった1,800余騎は城の南へ廻り、湯崎・川津口へ向かう。

他に納富信理(後に能登守家理)に副島式部少輔・木下四郎兵衛・杉町藤右衛門・木下左近允・石井大隅守らが加わって小塚口へ、龍造寺長信は搦め手へ其々向かった。

だが高岳城は小城ながら、北は岩石が聳えて細道、西は「百町牟田」と呼ばれる程の広い深泥で、
東は男島に砦が構えられ、南には二重の堀に塀を高くした上、所々に櫓を並べており、大変な要害であった。

平井勢も其々の口を差し固め、龍造寺勢が来るのを待ち構えた。

隔して11月26日、城攻めが開始されたが、一間堀攻めの先手・広橋一祐軒は追い立てられ引き退いた為、鍋島勢がこれに代わる。

広橋勢も立て直してこれに再度挑み、双方激しく鬩ぎ合い死傷者が多数出た上に日暮れが近付いてきた。

鍋島は広橋へ使者を派し、
「御辺、真先に駆けるともその槍先鈍きが為、我らが陣が進む上で差し障りとなっている。速やかに掛かられよ」と述べた。

広橋はこれに立腹、
「案内知らぬ攻め口で有る上に、日暮れも近いと申すに無理にも合戦を急ぐ軍法などあろうか! ・・・よし判った。この一祐軒に死ねとの申し出であるな・・・心得たり!」
と、この攻め口に骸を晒さんと士卒を下知して、自ら真先に進み遮二無二戦う。

これに平井家臣・川津近江守は敵の大将と見て、一祐軒を討ってその首を掻いた。

これに一祐軒の家臣二人が、主の仇逃すまじと近江守を討ち取った。

隔して日暮れとなり、両勢は互いの陣へ戻った。

12月20日、再び一斉に城を攻め始める。

信生は白石の郷長・秀伊勢守を案内者とし一間堀口を攻める。

鍋島勢は多数討ち死にするも、奮戦により遂に攻め口を破った。

更に深泥の方も城兵の油断により城内へ攻め入った。

東の信周勢も男島口から攻め入り、多数を討ち取ると共に男島の砦も打ち崩して平井刑部少輔を討ち取った。

双方に多数の討ち死にが生じたが、龍造寺勢は遂に高岳の本城へ迫った。

これに新宗吟が打って出たが、中島信》と太刀を合わせ、斬り合いの末に信連に討たれた。

信連も13ヶ所を切られ、半死半生となった。

平井経治はこれまでと腹を切ろうとするも、平井兵庫頭より「有馬・後藤を頼まれよ」と諌められて、西の百町牟田を桶に乗って越えて、山中へ忍び込んだ。

城内は大将が逃れた上は打って出るべしと、南の口より湯崎へ出た。

納富信景は一人も討ち漏らすなと下知すると、殆どを討ち取るに至った。

信生は本丸に至り残党を滅していく。

納富は、経治が既に落去したものと推測し、西の山に兵を差遣すると寺や民家を悉く焼き払わせた。

しかしながら、経治は見付からなかった。

経治は後藤貴明を頼り、二年後に上戸城へ入っている。




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時乃★栞

Author:時乃★栞
筑前・筑後・肥前・肥後・日向・大隅・薩摩に気合いバリバリ。
豊前は城井と長野が少し。豊後はキング大友関連のみ。

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